書評：大衆心理を利用して利益を上げる! FX・維新流トレード術 / 維新の介

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概要
FXの入門書たりうるか
経験者から見た場合の評価
総評

概要

「維新の介」なる正体不明の人物による著作。

単なるテクニカル分析ではなく，大衆心理を重視して値動きを見ることを推奨し，ダウ理論，グランビルの法則といった，いわば相場を読み解く上での基礎となる理論について解説しているほか，インディケーターについての解説も行っている。

と，これだけ書くと，いかにも良い本のようだが，というか，実際，他の方のブログ等で好意的な感想をたくさん目にしたのだけど，はっきり言って私は全く気に入らなかった。

FXの入門書たりうるか

何を隠そう，この本こそ，私が初めて読んだFXについて書かれた書籍だった。

というわけで，およそ１年半前，正真正銘のド素人だった私が*1この本でFXを学ぶことができたか，という観点での感想を述べる。

まあ，ぶっちゃけた話，この本を読んでも何もわからなかった。

書いてあることにはそれなりの理論的裏付けはあろうと思われた。

だが，当然のように使われる未知の単語，著者の謎の上から目線の鼻につく語り口によって，理解が妨げられた。未知の用語を調べようとするといちいち手が止まってしまい，時間もかかるし，解説自体は簡易な記述にとどまっているくせに，なぜか「素人は・・・」のような，上から目線の講釈を垂れてくる*2ため，一語一語を真剣に読んでいられなかった。著者によると，一回目でわからずとも，一度通して読んで全体像を把握し，改めて読み返せば理解できるはずだとのことだった。３回読んでも何もわからなかった。

いかにもわかりやすそうな豊富な図解もあるし，書いてある日本語の意味も分かるのだけれど，まったく内容が腹落ちしないのだ。だから何⁇という感じ。

本質的理解とは程遠いように思われた。ひとつひとつの内容が，実際のトレードでどう役立つのかもわからなかった。

経験者から見た場合の評価

以上が最初に読んだ頃の感想。

では，トレーダーとして多少なりとも経験を積んでから読んだらどうなるのか。

昨年末に改めて本書を読んでみた。

書いてあることは正しいと思う。

だが，実際のトレードに直結するような内容はほとんどなく，いまさら新しい発見はなかった。手法の部分についていえば，本書によらずとも，他のトレーダーの無料ブログで十分学ぶことができるし，トレーダーとしての心構えについては，本書よりよっぽど優れた書籍がある。

ただ，使える部分もないわけではないと感じた。

私は，インディケーターについては適当にしか勉強していないから，例えば，MACDって何だっけ？となることがある。

そうしたとき，辞書的に本書を参照することはありうる。

図解されているから，局所的に参照する場合には，理解の助けになることは大いにありうる。

局所的，というのが案外本書のキーワードかもしれない。

本書を理解しづらいと私が感じた理由，それは，本書が全体的なまとまりを欠いているということにあるのだと思う。ひとつ一つの記述がばらばらだから，理解しづらい。どうつながるのか分からない。

例えば，及川先生の書籍であれば，及川式という手法が軸にあり，相場の原理や，及川式のために必要なインディケーターについて解説されている。一貫性があるから，理解しやすい。

これに対して本書は，いろいろなインディケーターを紹介しているくせに，「オシレーター系のインディケーターを表示させれば十分」などと言って，結局，それまで解説していたうちの，どのインディケーターを，いつ，なぜ，どう使うのか，相場の原理とどうかかわっているためにそのような使い方になるのか，それぞれのかかわりを丁寧には示してくれない*3ため，今一つ理解につながらない。これでは，正確な情報が載っていたのだとしても，使える知識にならない。